「駐在としてベトナムに赴任しているが、任期後もベトナムで働き続けたい」
「会社都合の辞令ではなく、自分の意思でベトナムキャリアを選びたい」
そんな理由から、駐在から現地採用への切り替えを検討する方が増えています。
しかし、駐在と現地採用では、給与体系やビザ、キャリアの位置づけなど、働き方の前提が大きく異なります。こうした違いを理解しないまま切り替えると、想定していなかった待遇の変化に戸惑うケースも少なくありません。
本記事では、駐在から現地採用へ切り替える際に確認しておきたいポイントを、具体的な注意点とともに解説します。
すでにベトナムで駐在中の方はもちろん、これから駐在としてベトナムに赴任する予定の方も、将来の選択肢のひとつとして参考にしてください。
目次
駐在から現地採用への切り替えとは?
駐在は、日本本社の辞令によって海外法人へ派遣される働き方で、給与や住居手当などは日本基準で支給されます。
一方、現地採用は、ベトナムの現地法人と直接雇用契約を結ぶ働き方で、給与や待遇は現地基準に準じます。
駐在から現地採用への切り替えとは、こうした駐在という立場を離れ、ベトナムの企業と新たに雇用契約を結び直すことを指します。
主なきっかけ・パターン
駐在から現地採用への切り替えを検討する背景は、人によってさまざまです。
- 帰任辞令が出たが、ベトナムでのキャリアを継続したい
- 駐在期間の終了後も、家族の生活基盤をベトナムに残したい
- より裁量の大きいポジションに挑戦したい
- 転職を機に、現地採用として改めてベトナムでのキャリアを築きたい
ベトナムでの働き方全体の選択肢については、ベトナムで働く方法は?現地採用・駐在・フリーランスについて解説をご覧ください。
現地採用に切り替えるメリット
駐在から現地採用への切り替えには、注意すべき点がある一方で、駐在では得にくいメリットも多くあります。ここでは代表的な5つのメリットを紹介します。
キャリアを自分の意思で選べる
駐在は、辞令など会社側の意向によって配属や期間が決まる働き方です。一方、現地採用への切り替えは、自分の意思でベトナムでのキャリアを選び取る第一歩になります。
会社都合に左右されにくく、主体的にキャリアを描きやすくなる点は大きな魅力です。
裁量権の大きいポジションに挑戦できる
現地採用では、本社の稟議や承認プロセスを介さずに、現地法人内で意思決定を完結できる範囲が広がるケースがあります。あわせて、本社への報告・調整業務に割く時間も少なくなる分、現地マネジメントや事業運営といった現場業務によりまとまった時間を使いやすくなる傾向があります。駐在員も現地スタッフとのやり取りや現場業務は経験しますが、本社対応と兼務することが多く、現地採用の方が意思決定から実行までを現場で完結させやすい面があります。
また、現地スタッフと直接やり取りしながら業務を進める機会が増えるため、現場に近い立場で裁量を持って動きやすくなる点も特徴です。
生活基盤(家族・住居)を継続できる
駐在は任期終了とともに帰任・異動が前提となるため、家族の生活基盤や子どもの教育環境を一定期間ごとに見直す必要が生じがちです。
現地採用への切り替えは、住居や生活拠点をベトナムに置き続けられるという安定につながります。
生活コストを活かした暮らしやすさ
ベトナムは日本と比べて生活コストを抑えやすい国です。給与水準が下がった場合でも、家賃や外食費などの支出を調整しやすく、工夫次第で暮らしやすさを維持しやすい環境といえます。
駐在の場合、任期終了とともに帰国すれば、せっかく築いたベトナムでの暮らしや生活水準を手放すことになります。現地採用への切り替えは、こうした暮らしやすさをそのまま維持できる点もメリットのひとつです。
語学力・専門性が市場価値になる
現地採用として働くなかで培った語学力(ベトナム語・英語)や専門性は、ベトナム国内はもちろん、他の外資系企業でも評価されやすい市場価値になります。長期的なキャリアの選択肢を広げる要素のひとつです。
切り替え前に確認しておきたいこと
切り替えを検討する際は、まず手続き面で何が変わるのかを把握しておくことが重要です。
ビザ・ワークパーミットの切り替え手続き
駐在時のビザやワークパーミットは、日本本社との雇用関係を前提に発給されているケースが多く、現地採用への切り替えに伴い、雇用主の変更が必要になります。
そのため、労働許可証(ワークパーミット)や就労ビザ(LD)を新たに取得し直す必要がある点は事前に理解しておきましょう。
手続きには一定の期間がかかるため、切り替えのタイミングによっては、就労できない空白期間が生じないよう、早めに準備を進めることが大切です。
ビザ・ワークパーミットの詳細については、【2026年】ベトナムで働くために必要なビザ・ワークパーミットの手続きまとめをご覧ください。
雇用契約・所属先の変更
駐在時は、日本本社との雇用契約を継続したまま海外法人へ派遣される形が一般的です。
一方、現地採用への切り替えでは、日本本社との雇用契約を終了し、現地法人と新たに雇用契約を結び直すことになります。このとき、①今と同じ会社の現地法人に籍を移す「社内転籍」と、②別の企業(現地の日系企業など)に応募し直す「転職」の、大きく2つのパターンがあります。
詳しくは後述しますが、どちらに該当するかによって手続きの進め方が異なるため、自分がどちらを想定しているかを確認しておく必要があります。
給与・待遇面での注意点

駐在から現地採用への切り替えにおいて、影響が大きいのが給与・待遇面です。ここでは代表的な変化を解説します。
給与水準の変化(日本基準→現地基準)
駐在中は、日本本社の給与体系がベースとなり、日本国内水準の給与が支給されるケースが一般的です。
企業によっては、現地採用でも駐在時と同水準の給与を提示されるケースもあります。
とはいえ、現地採用の給与はベトナムの現地基準で設定されるため、駐在時と比較して給与水準が下がるケースが多い点は理解しておく必要があります。
また、ベトナムは日本と比べて生活コストを抑えやすい国でもあるため、給与額だけでなく、生活水準とのバランスで判断することが重要です。
住宅手当・帰国旅費など福利厚生の変化
駐在時に支給されていた住宅手当、帰国旅費、赴任手当などの各種手当は、現地採用に切り替えると原則として支給されなくなります。
これまで会社が負担していた住居費や医療費などを自己負担する場面が増えるため、切り替え後の生活費をあらかじめ試算しておくことが大切です。
一方で、企業によっては住宅手当や医療保険など、独自の福利厚生を用意しているケースもあるため、求人情報や面談時に確認しておくとよいでしょう。
税金・社会保険の扱いの変化
駐在中は、日本の社会保険(健康保険・厚生年金など)に加入したまま海外赴任するケースが一般的です。
一方、現地採用に切り替えると、ベトナムの社会保険制度への加入が必要になる場合があります。また、居住者・非居住者の判定により、所得税の課税方式が変わることもあります。
制度は改正されることもあるため、切り替え前に最新情報を確認しておくと安心です。
キャリア・将来設計への影響

給与・待遇面だけでなく、中長期的なキャリア設計への影響も考慮しておく必要があります。
帰任ポストがなくなるリスク
駐在は日本本社に籍を置いたまま海外へ派遣される働き方のため、任期終了後は日本への帰任が前提となっています。
現地採用への切り替えは、こうした帰任前提を手放すことを意味します。将来的に日本へ戻る可能性がある場合は、切り替え後のキャリアパスをどう描くか、事前にシミュレーションしておくことが重要です。
現地でのキャリアパスと評価制度の違い
駐在中は、日本本社の人事制度に基づいて評価されることが一般的です。一方、現地採用に切り替えると、転籍・応募先企業ごとの評価制度・キャリアパスの中で評価される立場になります。
昇進・昇給の基準や評価のタイミングは、切り替え先の企業によって異なるため、事前に制度を確認しておくことをおすすめします。
現地採用としての働き方の詳細は、ベトナムで現地採用として働く|メリット・デメリットからキャリアパスまで解説をご覧ください。
切り替えの主なパターンと進め方
駐在から現地採用への切り替え方には、主に2つのパターンがあります。それぞれ進め方が異なるため、順に見ていきましょう。
社内転籍として切り替える場合
同じ企業グループ内で、駐在から現地法人の直接雇用へ切り替えるケースです。人事部門との調整が中心となるため、比較的スムーズに進められる一方、給与テーブルが現地法人のものに切り替わるタイミングや条件を、書面で確認しておくことが重要です。
転職として現地採用に切り替える場合
現在の駐在先とは別の企業へ、現地採用として転職するケースです。
この場合、ビザ・ワークパーミットの取得はもちろん、応募書類の準備や選考対応も一から必要になります。在職中の転職活動になるため、スケジュール管理や情報収集を計画的に進めることが求められます。
切り替えを成功させるためのポイント

切り替え後の給与・待遇は、企業や職種によって差が大きいため、複数の求人情報を比較しながら、自分の希望条件を整理しておくことが重要です。
給与だけでなく、ビザサポートの有無や有給休暇の日数なども確認しておくと、切り替え後のミスマッチを防ぎやすくなります。
まとめ
駐在から現地採用への切り替えは、キャリアを自分の意思で選べる、裁量権の大きいポジションに挑戦できるなど、駐在では得にくいメリットが数多くあります。
一方で、給与水準や福利厚生、キャリアパスなど、駐在時とは異なる前提で働くことになる点も事実です。切り替えを検討する際は、メリットと注意点の両方を具体的に把握したうえで判断することが大切です。
ビザ手続きや契約内容など、個人での判断が難しい点も多いため、まずはお気軽にご相談ください。
