2026.06.25

企業向けブログ 人材採用

福利厚生・手当の設計、ベトナム法人で見直すべきポイント【2026年最新】

ベトナムでは離職率の高さや人材獲得競争の激しさから、給与額だけでなく「福利厚生・手当がどれだけ整っているか」も転職先選びの重要な判断材料になっています。一方で、手当は種類が多く、何を・いくら支給すべきか相場感だけでは判断しづらい領域でもあります。

本記事では、ベトナム法人が福利厚生・手当を設計する際に押さえておきたい考え方を、当社の複数のお客様企業に見られる実例を交えて解説します。

 

なぜ今、福利厚生・手当の見直しが必要なのか

ベトナムでは人材獲得競争が続いており、求職者は給与額だけでなく、福利厚生や手当の充実度を比較検討する傾向があります。とくに日系企業が多い業界では、似たような基本給を提示する企業同士が、住宅手当や役職手当の有無で差をつけられているケースも少なくありません。福利厚生・手当の充実は、採用・定着の両面で見直す価値があるといえます。

また、ベトナムでは社員旅行や季節イベント(運動会・BBQなど)「会社文化」も待遇の一部として捉えられる点が特徴です。福利厚生を「制度」としてだけでなく、社員との関係性を築く手段として位置づける企業も増えています。

手当を一度導入すると見直さずに運用し続けてしまう企業も多く見られますが、相場とズレた支給を放置すると、必要以上にコストがかさんだり、逆に競合に見劣りして採用力が落ちたりするリスクがあります。

ベトナムの福利厚生は2種類に分かれる

ベトナムの福利厚生は、法律で義務付けられている制度(法定福利)と、企業ごとに導入する制度(法定外福利・手当)の2種類に分かれます。
法定福利と法定外福利

法律で義務付けられている制度

主なものは以下のとおりです。

・社会保険・健康保険・失業保険(ベトナム人従業員の場合、会社負担21.5%/個人負担10.5%が目安。)
・有給休暇(年12日〜、勤続5年ごとに1日追加)
・産前産後休暇(産休)(最大6ヵ月、社会保険から給与相当額が支給)
・定期健康診断(年1回)※労働安全衛生法上の法定義務として位置づけられます

これらは労働法に基づく制度のため、企業側に裁量の余地はほとんどありません。なお、求職者側の視点からこれらの基本制度を解説した記事として、「ベトナムの福利厚生とは?有給・保険・テトボーナスなど日本との違いを解説」もあわせてご参照ください。

企業ごとに導入する法定外の手当

一方、住宅手当や役職手当、皆勤手当などは企業ごとに内容が大きく異なります。ベトナムでよく見られる手当には、以下のような種類があります。

・通勤手当(ガソリン代補助)
・出張手当
・役職手当
・皆勤手当
・住宅手当
・言語能力・資格手当

これらの手当は、種類によって社会保険の算定基礎に含まれるか、個人所得税の課税対象になるかが異なります。社会保険と個人所得税はそれぞれ別の判定基準があり、同じ手当でも両者の扱いが一致しないケースもあります。たとえば、役職手当のように社会保険の算定基礎に含まれるものがある一方で、通勤手当や住宅手当のように社会保険の対象外となることが多いものもあります。ただし、個人所得税の扱いは支給方法や規程の定め方によって異なるため、項目ごとに確認が必要です。

手当は法的な義務がないため導入は企業の裁量に委ねられていますが、「何のためにその手当を支給するのか」というロジックを社内で明確にしておくことが重要です。相場を意識しすぎて自社の実態に合わない手当を導入すると、無意味にコストがかさむだけになってしまいます。また、社会保険・税務上の取り扱いを誤ると、後から追加の保険料・税負担が発生するリスクもあるため、規程設計の段階で確認しておくと安心です。

当社がご支援している複数のお客様企業(日系企業)では、次のような手当の事例が見られます。(特定の1社の制度ではなく、複数社に見られる傾向として、数値は近似値で紹介しています)

言語能力・資格手当 30万VND~50万VND程度のレンジで設定
皆勤手当 30万VND~50万VND程度のレンジで設定
貢献手当 20万VND~40万VND程度のレンジで設定
役職手当 主任(Tổ trưởng / Leader)100万VND~150万VND
課長(Supervisor / Manager)200万VND~250万VND
部長(Department Head)350万VND~400万VND
結婚祝い金 100万VND~200万VND
出産祝い金 200万VND~300万VND
ガソリン手当 1リットルあたり40km~50Km走行という前提で計算し、走行距離を5kmごとにグループ分けして支給額を設定

皆勤手当や貢献手当のような「行動・成果に紐づく手当」を一定のレンジで設定し、評価や勤続に応じて段階を変えているケースや、役職手当を段階的に設計してキャリアパスを可視化しているケースが見られます。

ガソリン手当のように、実態に近い計算ロジック(燃費×距離)を採用すると、支給額の説明がしやすくなります。例えば、燃費40km/Lという前提で片道通勤距離20kmのグループを想定すると、往復で必要な燃料は約1.0L/日。2026年6月時点のガソリン価格(1L=22,000〜23,000VND程度)で計算すると、1日あたり22,000〜23,000VND程度が目安になります(地域・車種・実勢価格により変動します)。計算式を社内で共有しておくと、通勤距離が変わるたびに支給額を個別交渉せずに運用できます。

手当設計で押さえておきたい3つの視点

法定外の手当を設計する際は、次の3点を意識すると判断がぶれにくくなります。
手当設計

1. 支給目的を明確にする
「なぜこの手当を支給するのか」を先に決め、対象者・条件を逆算する。目的が曖昧なまま支給を始めると、後から対象範囲や金額の見直しがしづらくなります。

2. 自社の就業実態に合わせる
内勤スタッフ全員に出張手当を一律支給するなど、実態と合わない手当は見直しの対象になります。

3. 段階的な設計にする
役職手当のように等級ごとに段階を設けることで、昇進のインセンティブとしても機能させやすくなります。

よくある落とし穴と対策

福利厚生・手当の設計では、次のような落とし穴に注意が必要です。

・相場だけで手当を決めてしまう
他社の支給額をそのまま真似ると、自社の業務実態に合わず、コストだけがかさむことがあります。まず目的を決め、相場は参考情報として扱うことが大切です。

・社会保険・税務上の確認を後回しにする
支給基準が曖昧なまま運用すると、後から社会保険料や個人所得税の追加徴収につながる可能性があります。就業規則に支給基準(計算式・対象条件・支払時期)を明文化し、必要に応じて会計・税務の専門家に確認しておくと安心です。

ベトナム特有の慣習・最新トレンド

手当とあわせて押さえておきたいのが、ベトナム特有の慣習や最新の制度動向です。

テト(旧正月)賞与
法律上の義務はありませんが、慣習として少なくとも1ヵ月分の給与に相当する額が支給されることが多く、ホーチミン・ハノイのホワイトカラー層では1ヵ月分の給与を基準に、業績や個人評価に応じて支給額を増減させる企業も多く見られます。

独立記念日(9月2日)
企業による賞与の義務はありません。2025年はベトナム建国80周年にあわせ、政府から国民へ一律10万VND程度の特別給付が実施されましたが、これは毎年恒例の制度ではなく、節目の年に限った公的な給付です。当社のお客様企業の中には、独立記念日にあわせて1人あたり約190万VND程度の賞与・ギフトを独自に支給している例も見られます。

福利厚生費の損金算入
社員やその家族に行う医療費や生活支援などの福利厚生費が、従業員1人当たりの実支給給与の平均月額の1か月分相当以内であれば、法人税上の損金として認められるのが基本です(Thông tư 96/2015/TT-BTC)。あわせて、就業規則や社内規程に目的・金額・対象者を明記し、支給根拠や証憑を整備しておく必要があります。支給目的が曖昧なものや証憑が不十分なものは損金算入を否認されるリスクがあるため、導入時に確認しておくことをおすすめします。

在宅勤務(テレワーク)に伴う手当の見直し
コロナ禍を経てベトナムでも在宅勤務が少しずつ浸透しており、通信費・電気代などの在宅手当を新設する企業や、出社日数に応じて通勤手当を日割りで見直す企業も見られます。費用を会社負担とするか従業員負担とするかは企業によって対応が分かれるため、精算方法(請求書提出の要否等)まで含めてルール化しておくと運用がスムーズです。

これらの法令解釈や税務上の取り扱いについては、当社は法律・税務を専門とする事業者ではないため、具体的な適用可否は現地の弁護士・会計士への確認をおすすめします。

人気の福利厚生ランキング

ベトナムで働く従業員にとって人気の高い法定外福利厚生としては、祝い金(結婚・出産等)、社員旅行、社内イベント、プライベート医療保険などが上位に挙がる傾向があります。加えて、ボーナス、昇給、研修支援、昼食補助、駐車場補助、ビザ・労働許可サポートも、雇用形態や職種によって高く評価されやすい項目です。

福利厚生・手当規程の整備の進め方

手当の見直しや新設は、以下のようなステップで進めるのが現実的です。

福利厚生・手当整備の進め方

  1. 現状把握:現在支給している手当を棚卸しし、目的・対象者・金額を整理する
  2. ベンチマーク:同業他社や地域の相場感を確認する
    支給ロジックの整理:誰に・なぜ・いくら支給するのかを明文化する
  3. 規程ドラフト作成:必要に応じて現地の専門家にレビューを依頼する(例:「毎月の遅刻・欠勤が0日の従業員に対し、月額○○VNDの皆勤手当を支給する」のように、対象条件と支給額をセットで明文化する)
  4. 従業員への周知:制度の意図を説明し、納得感を持って運用してもらう
  5. 定期的な見直し:物価や昇給率の変化、離職率や従業員満足度の変化も参考にしながら、手当額やラインナップを見直す

まとめ

福利厚生・手当の設計は、相場に合わせることよりも「自社の実態に合ったロジック」を持つことが重要です。ご紹介したお客様企業の実例のように、行動・成果に紐づく手当を定期的に見直し、段階的な役職手当でキャリアパスを示すことは、社員の定着率向上につながります。

福利厚生の充実は、採用ブランディングの観点でもプラスに働きます。自社の手当制度を見直す際は、まず現状の棚卸しから始めてみてください。

―――
・本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的・税務上の助言ではありません。
・具体的な制度設計や法令適用については、ベトナムの弁護士・会計士・コンプライアンス専門家にご確認ください。
・記事内の実例の金額は、特定企業を識別できないよう近似値に調整しています。

■ あわせて読みたい(R-VIETNAM内の関連記事)

ベトナムの福利厚生とは?有給・保険・テトボーナスなど日本との違いを解説
転職動機1位は給与ではない?!ライフステージ論を基に転職動機と向き合う

■ さらに詳しく知りたい方へ(外部記事)

ベトナム人事労務:在宅勤務(テレワーク)のポイント|EOEレター
従業員家族への疾病・手術支援費用の損金算入事例(5つのケーススタディ)|Manabox Vietnam

※上記は third-partyメディアの記事です。当社の見解ではなく、外部情報源として参考にご活用ください。